「老耄の居合道と剣道         

居合道教士七段・剣道教士七段 尾上喜八郎     「剣報長崎」第23号 平成18年7月 より

 広報委員長との約束で「剣報長崎」へ投稿します。原稿を頼まれ、長いこと約束を果たさず、やっと筆をとる。子供の頃から手紙を書くのもいやだった。彼女にラブレターは出したことはあったが、内容は覚えていない。約束を果たさないと嘘つきになるし、昔から嘘つきは○○の始まりと言われているので書くことにした。

 数年前、NBCテレビが私の居合を放映した。それを取り上げて『ながさきプレス』が次のように書いている。

 「 まず50歳で居合を始めたと言う諫早市の尾上七段は今年4回目の八段挑戦である。誰に習うのでもなく、解説書を頼りに独学で剣を振り続けた。17年後に七段の資格をとり、それから12年ということは現在79歳。

   長崎市立諏訪体育館で毎週日曜日は午前4時起きで、同じく居合道三段の妻マツさんと道場に向かう。刀を振るフォームをマツさんに細かくチェックしてもらう。尾上さんの『ありがとう』という言葉がスッとでてくるところが素晴らしい。『自分の悪いところを切るのです』ひたすら居合のことを思い刀を振り続けてきたからこそ出てくる言葉がこぼれ落ちてくる。居合道とはなんだろうと考えてみるがよく判らない。何の結論も出ず、居合とは稽古することだろうということになった。」

 

 ほめすぎですよね。別にするものがないので剣道・居合道をやっているだけですよね。毎週日曜日は午前6時より居合道1時間、9時より10時半まで剣道を範士吉田先生の指導の下に稽古しています。通い続けて18年くらいになっているようです。多くの方々と剣道、居合道やって汗を流し、面白い話などもたくさんして、おしゃべりを私がするのです。本当に楽しいです。

まだ、若いですから元気もあるようです。しかし、今年で84歳になりますが、余生などと思ったことはありません。剣道と居合道が生命の源泉のようです。剣道は79歳と11ヶ月で七段をいただきました。毎日木刀での素振りは3000本を続けています。

いつまで続くか判りませんがね。剣道七段を頂いたとき、肩の荷がおりた思いでした。というのは居合道八段への挑戦がありましたので、毎年京都の武道祭の折、5月3日剣道七段、4日居合道八段に挑戦していたのですから。

 今年5月3日、通算8回目の居合道八段の挑戦でしたが、勿論不合格でした。でもまた挑戦しようとムズムズしています。八段なんて私にとっては雲の上のようなものですからね。無欲の欲みたいな気もしますよ。でも、剣道も居合道も楽しいですよ。これが私にとっては生命の泉のようです。よくしゃべります。しゃべり過ぎもたくさんありますが、仲良く剣道も居合道も稽古させていただいてます。気の向くまま自由に生活しています。

 思いがけなく5月15日諫早市より「体育功労賞」というものを頂きました。なんで私のような者にとも思いました。背広も着ずにいつもの作務衣姿で賞をいただきました。式が終わったら御馳走がたくさんでましたよ。見たこともないような美味しそうなものがたくさんでましたよ。本当においしい御馳走だったので、池の鯉のようにパクパクと食べました。

 家には午後11時頃帰りました。お母さんは帰りを待っていました、妻のことを家ではお母さんと呼んでいます。私のことはお父さんと呼んでくれます。頂いて来たよと表彰状と楯を見せました。「ああ、よかったね。お父さん。」といって喜んでくれた。明日の居合の準備のため、刀の手入れをして床につきました。6月11日午前1時でした。

                                 終わり

(「剣報長崎」編集長補足・・11日は長崎市居合道講習会があり、尾上先生にも来ていただきました。)